ワンダー君は太陽
Atualizado: Jan 15
去年出版された本、「顔ニモマケズ」の表紙を飾っておられる中島勅人さんを初めて知ったのは2013年に放送されたNHKEテレのハートネットという番組でした。
医師の中にも知らない人がいるほど希少な疾患であるリンパ管腫のこと、リンパ管腫患者さんの想いについて、社会に知らしめてくれた中島さんに会ってお礼が言いたいと思いました。
思えば叶うんですね。
2015年に国立成育医療センターで開催された第一回小児リンパ管疾患シンポジウムで中島さんとお話することができました
縁あって私は25年以上世界中のリンパ管腫患者さんを支援する活動を行っています。
中島さんがお子さんだった頃は、リンパ管腫治療の第一選択は外科切除でした。
少しでも取り残しがあると再発するのですが、実際、リンパ管腫は重要な神経や組織に浸潤していくので、リンパ管腫だけを取り除くのは極めて困難で、度重なる外科手術を余儀なくされる患者さんは後を絶ちませんでした。
そんな状況に光を当てたのが、小児外科医、故荻田修平医師でした。
1986年、当時がん治療に使用されていた薬剤OK-432(商品名ピシバニール)を患部に注射し、縮小させる治療法を発見しました。その効果は著しく、日本では第一選択の治療となりましたが、肝心の薬剤が日本と台湾、韓国(当時)のみしか販売されていないため、海外から来日する患者さんがいました。
1992年、メキシコから来日した患者家族の通訳を務めたのが、私が支援活動を始めたきっかけです。
残念ながら、OK-432の治療効果が期待できないタイプのリンパ管腫もあります。
全体の約2割と言われています。
私はこの25年間、見た目問題を抱える患者さんとご家族の苦悩を目の当たりにしてきました。
通訳は病院内にとどまりません。生活全般をサポートします。周囲の反応を感じながら思うことが一杯ありました。
メールで相談を受けることもありました。
やり取りは延べにすると何千通???何万通???数えられないほどです。
先日、娘と一緒に現在上映中の映画「ワンダー君は太陽」を見てきました。
主人公オギーはトリーチャーコリンズ症候群
という生まれつき頬骨などが形成されない疾患をもつ少年です。

見た目問題を抱える当事者さんやご家族の心情が丁寧に描かれていて、私は中島さんを拝見したときのようにこの映画を作ってくれた映画監督さんやキャスト、スタッフさんに感謝の気持ちで一杯になりました。
支援活動の中で、荻田先生からは言語面以上のものを期待されていました。 それは、患者さんやご家族の気持ちを支える役割です。
自分には何ができるのか。何を求められているのか。
活動を開始した頃自問自答する中で、一つ気がついたことがありました。
それまで、身体的特徴について、言われることにも言うことにも何の疑問も感じていなかったということです。
「目が大きい」
「鼻が高い」
「スタイルがいい」
会話の中で日常的に耳にします。
全部、どうでもいいことだったこと、言われると中には不快に思う人がいることに気がつきました。
それからは相手の醸し出す雰囲気に目を向けるようになりました。
その人の選ぶ洋服のセンスとか、素敵な話題とか笑顔をみつけて、相手に伝えます。
娘にもそう教えてきました。
映画の中で、主人公オギーの友達ジャックは、オギーとなぜ一緒にいたいと思ったのかこう話しています。
「見た目はすぐに慣れるよ。彼は面白いし頭がいいんだ。オギーと一緒にいると楽しい。」
彼の言葉は人の魅力について核心をついていると思います。
映画を見終わって、娘も私も涙で顔がぐちゃぐちゃになりました。
娘は、サニーやジャックの勇気に感動し、私は母親の強さと優しさ、子どもが成長していく様子を見て、それまで二の次にしてきた自分のキャリアにもう一度挑戦しようとする前向きな気持ちや、母親とは違うアプローチで息子を支えようとする父親、姉が弟を想う優しさと誰にも言えない寂しさに共感しました。患者の兄弟姉妹にも心のケアが必要です。
また、主人公オギーや家族の心の支えになってきたワンちゃんの存在の大きさも感じました。
私の娘がこう言ってくれました。
「ジャックのママ、お母さんと似てた。」
映画を見ながら、もし私がジャックのママだったら同じことをしていただろう、と思っていたので、正直嬉しかったです。
最後に、最も心に残ったオギーの友達、サニーのセリフを引用します。
"When given the choice between being right and being kind, choose kind" 正しいことと優しいこと、どちらかを選ぶなら、優しさを選びなさい。
一つ躊躇してきたことがあるのですが、この格言のおかげで行動に移せそうです。